昨年はニッケあすも市川の立ち上げ準備を進める中で、人の温かさやその温かさがどれほど人を勇気づけるかを肌身で感じることができた一年でした。
この体験は私にとって大変貴重ですし、この体験で得たことは施設運営を行う上で本当に肝になる部分だと思っております。
人の温かさと言えば、年末にこんなことがありました。
私自身、施設のご紹介をさせていただく時に建物の魅力をお伝えしきれていないことにすごく悩んでいました。
あすも市川は京都大学工学部の三浦研教授が監修された建物です。
三浦教授は環境行動理論に基づく高齢者施設や住宅の計画・設計・研究に取り組んでおられます。
三浦教授に「あすも市川」への想いを尋ねるべく思い切ってメールを送りました。
お返事を頂いたその内容を三浦教授に許可を頂き、ご紹介させていただきます。
「(あすも市川の建物は)介護の効率と、居場所づくりのバランスを大切に計画しています。
介護の効率を重視すると、死角がなくなります。
死角がなくなればスタッフは安心しますが、逆に利用者様は落ち着きがなくなります。
落ち着かなければ、歩き回るなどの行動が生じて、逆にスタッフの方は、介護に追われてしまいます。
あすもでは、施設よりもカフェのような、リラックスできる空間を用意して、そこに、ワンルームの空間で見通しを確保しながら、若干の壁に凹凸を設けて、均質な空間にならないように配慮されています。
普通の施設が病院らしい雰囲気であるのに対して、どちらかというと、センスの良いカフェになるように意図しています。
このほか、天井面のメリハリにも配慮しています。
一般的に病院では、病室から廊下、食堂まで、同じ色、素材、高さで天井が続きます。
こうなると、空間のメリハリがなく、均質な印象となります。
介護施設では、床の段差は作れないので、床で作れないメリハリを、天井面を印象的に操作することで、視線は続いているのに、印象としては別の空間があるような効果を意図しています。
また、一般的には南側にリビングを設けていますが、あすも市川では北側に窓を大きく取り、視界を広げています。
これは、真間川、総武線、山並みの景色を眺めるためです。
実は、南側の風景は、太陽の日差しの影(逆光)になるので、くっきり見えません。
一方、北側は、太陽の日差しを浴びるので、とても景色が良いのです。
総武線を行き交う電車は男性には、よい視対象となります。法華経寺側の山並みもきれいに見えます。
北側に窓を大きくとることで、明るく、見て楽しい居場所を作っています。」
私はこの内容を拝読させていただきながら、このような側面から人をサポートすることが出来ることを初めて知ったことと、三浦教授の人をサポートする温かさを感じて心がモコモコのセーターを着たような気分になりました。
介護は人が行う直接的なサポートが一番重要で、それに勝るものはないと考えていたことを反省しました。
確かに私たちは環境や空間によって心が癒されることがある。
いつも誰かがいる場所から離れて、ひとり自然や風景の中に気持ちを投じることの心地良さ。
自分だけのお気に入りの場所があることの安心感と優越感。
これは心豊かな時間を過ごすためには必要であるのに、高齢者施設にはそのエッセンスは重要視されてこなかったと思います。
高齢になっても障害を持っても、自分のペースで楽しめて、自分の好みで選択できる。
自然や風景や空間には、自分の価値観で自由に楽しめる「妄想娯楽」があるんだと思いました。
このような想いがぎっしり詰まった建物のなかで、「現実娯楽」と「妄想娯楽」を思う存分楽しんでいただけるよう私自身、もっともっと視野を広げて、もっともっと心を柔軟に、ずっとずっと謙虚さを忘れずにいたいと思います。
ご入居者様や私たちスタッフが、人や自然そして空間の温かさを感じながら日々を過ごし、そのなかで得られる充実感や幸福感によって放たれるエネルギーで、完成された施設がさらに輝きを増して行くように。
1月27日28日の内覧会では、そんなあすも市川の魅力をたくさんの方々に見ていただけると嬉しいです!!
あすも市川開発準備室 西