特別対談 三浦 研 京都大学大学院教授

「あすも市川」への想い~居合わせる~
山﨑 今回あすも市川のプレゼンで先生に書いて頂いた図面とかコンセプトとか色々拝見すると3つのキーワードを組立てて頂います。
「会話を産む」ということと、「居合わせる」という凄く良い言葉と、「動きを作る」という生活の中のポイントを頭に置きながら設計して頂いたというところですよね。
これは具体的にどういう所にあらわれてくるのかなって確認しておきたいなと思っています。
三浦 まず、介護のコミュニケーションと居合わせるというのは実はセットでお話した方がいいと思います。
介護の世界というのは真心でコミュニケーションしようっていう優しい方が多いと思うんですけど、実は環境要素なんかが上手く媒介になってくるケースも日常生活では凄く多いんですね。
本当に一例ですけど、よく初めてデートに行くとかっていうとドライブに行ったり映画館に行くっていうのが定番って言われてますよね。
それは実はコミュニケーションを出会って間もない2人が密室みたいに向き合ってしまったら話題に詰まった時に居心地悪くなるじゃないですか。
上手く共有できる景色であるとか映画館行く場合であればスクリーンですよね。ドライブだったら景色。それを共有する形で無理なく居合わせられるようなセッティングを作るということなんですね。
ですから、コミュニケーションが苦手だとかなかなか難しいっていう時に職員さんは自分のせいにしがちなんですけど、実はむしろ環境の側の貧しさ、共有するものがあまりにもないからなんですね。
特に介護施設の場合は認知症などの問題があってトラブルが無いように一般の住空間であれば普通にある様なものがちょっとこれまずいよね、躓くと危ないよねといって除かれてしまうということがありますよね。そうなってしまうと手掛かりが無くなってしまって、コミュニケーションが出来なくなってしまう。
ですから、そこの部分の工夫っていうのは、今回の計画では意図的にやってるつもりです。
一般的には介護施設っていうと「見守りやすい且つコンパクトな空間」となるのでホール型といってリビングをお部屋が取り囲む様なレイアウトがやっぱり多いんですね。
こうなってしまうと、見守りと言う点では便利なんですけど、今言ったコミュニケーションや居合わせると言う点では共有する景色がない。
だからデートの時にドライブに行ってもその日は真っ暗で景色がなかったみたいになっちゃうわけですね。
そうではなくて今回の市川の場合は北側に真間川であるとか、あと山ですよね。大きく開いている景色が人と人を繋いでいく役割をしてくれると思ってます。
あと皆さん南向きがいいかなって思われるかもしれないですけど、実は北側の景色、お庭や日本庭園では北側の良さっていうのがよく言われてるんです。
逆に北側ですと、お日様が綺麗に当たってパリッとした景色になるんですね。だからヨーロッパだと割りと北側が人気になったりするんです。本当にこの地域は川があります。それから山々の緑が見えます。それと総武線が見えます。これはね、特に男性にとってみれば…
山﨑 動くもので。「鉄ちゃん」は好きですね。
三浦 やっぱり男性はどうしても、コミュニケーションの話だと苦手ですよね。
女性だとやっぱりまとまりやすいし、お話も好きで上手なんですけど、介護施設の場合はお年寄りがどうしても居場所を見つけにくくなるところがあって、今回は川であるとか緑であるとか動きがある鉄道(総武線)、それがね凄く良い物になってくると思います。
山﨑 北側の景色に財があるというか適切な場所として使えるということなんですね。
三浦 特に階数が上がってくると景色が開けて、町に当たった光の反射も階数高くなるとそんなに眩しくない。3階とか4階とかお勧めの所があって良い空間になると思いますよ。
サービス付き高齢者住宅というのじゃなくて、サービスを気にしても住宅だということですね。
面積効率だけ優先すると廊下型になってしまいますけど閉塞感が出てしまいます。
今回はニッケさんが思いきって下さって、格好の立地の良さを生かす様に住戸の数を抑えて頂いてますので、本当に気持ちのいい、皆さんにこれからの団塊の世代に御満足頂けるようなそういう建物になると思いますね。
山﨑 先生の設計をしてくださる特徴として、割と一つ一つの部屋の顔が違っていて手作り感がありますよね。
運営の面からすると規則を与えることって難しいのかなと思うんですけど、ここは自分しか住めなくてこれは世界に一つしかないって思って頂けるようなご案内が出来ると良いですよね。
あすも市川から北側を望む

 あすも市川から北側を望む

「えー、皆と違うのっ」て思われるのかもしれないですけど、あなただけのお部屋ですよって言う風にプレゼンをして差し上げたいなと思っています。
先ほど先生が仰った北側って、普通北枕とか敬遠されがちなんですけど、そうじゃなくって「北側」とってもお気に召しますよって、まずは北側見て下さいって言う風にご案内出来る自信作になると思いますね。
そうかぁ。私までワクワクしてきました。
気力がみなぎる立地、住空間を創る
三浦 後は、この立地の良さを生かすのがコンセプトの中心になっています。
景観に加えて隣にあるニッケのショッピングセンターがありますよね。これだけの立地って言うのはなかなか得がたいですね。どれだけ良いサービスを提供できたとしても生活がそこで閉じてしまったら、やっぱり季節の移ろいとか、自分で描く体験とか町に参加するというのが難しくなりますよね。
私達、ヨーグルトを朝ごはんに食べたとしても、自分で選んでどれにしようかなって選んでヨーグルトを食べられるというのがまさに日常生活です。
ヨーグルトを朝ごはんに食べるとき、自分で選んでどれにしようかなって選んでヨーグルトを食べられるというのがまさに日常生活です。ですが普通の介護施設だとそれは簡単ではないんですね。
メリハリの効いた設えの天井

 メリハリの効いた設えの天井

でも、ニッケの今回の「あすも市川」だと他に比べるとそれが物凄くやりやすい。それは、ご利用者様の満足度に大きく関わるところになりますね。
それは、ご利用者様の満足度に大きく関わるところになりますね。
使い勝手というところでは当然最低限のところはクリアしないといけないんですけど、管理の発想が強すぎるとそこに入った時に本当に生きる力を失ってしまいがちになってしまうんです。
最後の一葉っていうオー・ヘンリーの話をよくします。
あれは、肺炎になった主人公が、もう最後の葉一枚が落ちてしまったら自分の命も亡くなるっていう風に落ち込んでしまってぐーっと悪くなっていく。そこで、ある画家が嵐の中で壁に葉の絵を描いて、その葉が残ったことによって生きる力を取り戻して行くと言うお話ですよね。
実は、環境と人って凄く結び付いていて、機能面だけじゃない心理的な結びつきって凄く大きい。それが感情であるとか、生きる気持ちというのに影響してると思うんです。
従来の衛生面であるとか運営面、見守りの事を重視するあまり、住宅からかけ離れた様になってしまうと、そこに入った時に分かっていても、しゅんとされてしまうんです。人って本人が前向きになれるか、もう生きること自体に諦めを持ってしまうかで随分変わってくると思うんですね。
病院なんか少し思いだしてもらったら分かりやすいと思うんですけど、色は全部白だったり薄ピンクだったりパステルカラーだったり。天井面なんかが一本調子で部屋から病室から廊下を抜けてそこから共用スペースまでずーっと続いています。見守りが大事だから重視しないといけないのですが見守りを重視するあまりに死角がなくなって一本調子の空間になってしまう。
そうすると、確かに見守りはしやすいんですけど、空間的なメリハリが物凄くなくなってしまう。
今回は一つの挑戦として、見守りしやすいけど一本調子にならない様に空間を分節してます。その分節も通常の住宅であれば床面の操作と言う形で豊かな変化を付けやすいんですけど、住宅介護施設や高齢者住宅では当然床面の段差って作れませんから、天井面とか壁とか外壁みたいなところを微妙に工夫することによって視線がずーっと一本調子で抜けてしまうって言う状況を作らない様にしています。
山﨑 視覚の面で天井を逆に使ってるってことですね。
三浦 我々、空間を作る側としては変化を出したいという所はあるんですけど、あまり出しちゃうと職員さんにとってみれば見守りにくくなるのでそこは最低限で留めて天井面のメリハリを付けたり、人がここに集まるならばこんな仕掛けをと考えたりしていますので、そこは是非注目して頂きたいところですね。
ほんとに潜在意識に働きかけるくらいの微妙な次元の工夫ではあるんですけど、何か、違うなというのは訪れた方へのメッセージですね。
目指しているのは生きる気力をしっかり、失わせない、そういう空間になればということがコンセプトですね。

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